日本のパンの原料や、パンが食卓に届くまで~パンの流通の仕組み~

日本のパンの原料や、パンが食卓に届くまで~パンの流通の仕組み~

気軽に食べることができて種類も豊富なパンは、今や私たちの食生活に欠かせない食べ物。毎日食べているという方も多いかもしれません。しかし、普段口にしているパンがどこから来たのかを考えたり、パンの原料について考えたりしたことはあるでしょうか。

そこで今回は、日本のパンの原料や流通の仕組みをご紹介します。

日本のパンの原料

mechanism-of-distribution-of-bread-2スーパーやコンビニのパンもパン屋さんのパンも、基本原料の種類自体は同じです。パンの基本原料は、小麦粉・イースト・水・塩の4種類。それぞれの働きをご紹介します。

【小麦粉】

小麦粉は、たんぱく質の含有量によって強力粉・中力粉・薄力粉に分けられ、パン作りにはたんぱく質が最も多く含まれる強力粉が適しています。強力粉は弾力のあるパンを作るもととなり、小麦粉の代わりにライ麦粉や米粉などを使用する場合もあります。

【イースト(製パン用野生酵母・天然酵母・自家製酵母)】

イーストとは、酵母を意味します。イーストは微生物で、発酵の際に炭酸ガス(二酸化炭素)を生成し、味や香りのもととなる成分を作り出してパンの風味を決定付けます。イーストと一言でいってもさまざまな種類があり、メーカーは研究を重ねてパンに最も適したイーストを開発しています。

短時間で発酵して簡単にパンが作れるイーストに対して、果実や穀物などを原料にゆっくり自然発酵させて作る自家製酵母は、その独特の味と香りがパンの個性をさらに引き立てます。最近では手軽に安定したパン作りが楽しめる天然酵母パン種なども数種類が市販されており、なかでも白神山地で発見された製パン用野生酵母は、天然の酵母でありながら、種おこし不要でかんたんおいしいパン作りが魅力です。

【水】

小麦粉と水を混ぜ合わせることにより、粘り気のあるグルテンという成分が形成されます。グルテンはイーストが発酵した際に生成する炭酸ガスを包み込み、外へ逃しません。ふっくらしたパンを作るために欠かせない成分といえるでしょう。

【塩】

パン作りで使用する塩の量はごくわずかですが、塩は重要な役割を担っています。塩には、グルテンを強くして張りのあるパンにする働きがあります。そして、生地を引き締める上でも非常に重要。さらに、小麦の風味を引き出して雑菌の繁殖を防ぐ働きもあります。

【その他の原料】

副原料として、バターやマーガリンなどの油脂、乳製品、卵、砂糖などが挙げられます。その他にも、フルーツや野菜などさまざまな種類の副原料があります。

食卓に届くまでの流れ

mechanism-of-distribution-of-bread-3パンが食卓に届くまでに、どのような道筋をたどっているかご存じですか?

ここでは、スーパーやコンビニに並ぶパンについて、おおまかな流通の仕組みをご紹介します。

まず、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどから小麦が輸入されます。日本のパンに使用する小麦の多くは外国産です。なぜなら、外国産の小麦はたんぱく質の含有量が多く、日本の小麦よりもパン作りに適しているためです。

なお、最近では国産の小麦を使用してパンを作るケースも増えており、すべてのパンが外国産小麦を使っているわけではありません。

次に、輸入された小麦を政府が買い取ります。その後、産地検査や農薬検査、水分検査などの厳正なチェックを行った上で、製粉会社に販売されます。

製粉会社によって作られた小麦粉は、工場やメーカーに運ばれます。工場でのパン作りにかかる時間はおよそ8時間で、そのうちの半分は発酵の時間です。

包装され商品となったパンは、スーパーやコンビニへ運ばれます。そして、私たちの食卓に到着するのです。

食品安全管理システム

安全なパンを作るためには、厳しい検査が必要です。代表的な制度として、法律に基づいた検査に加え、米国製パン研究所(AIB)が定めた「AIBフードセーフティ指導・監査システム」というシステムがあります。

このシステムは60年以上の実績を持ち、アメリカのみならず世界各地の工場で導入されています。現場での指導に重きを置いていることが特徴のこのシステムは、日本パン技術研究所によって国内のパンメーカーにおいても積極的に導入されています。

おわりに

パンの基本的な原料は昔から変わらず、小麦粉・イースト・水・塩です。それぞれが相互に働きあっておいしいパンができあがります。そして、安全でおいしいパンが食卓に届くためには、多くの工程が必要です。厳しい検査や工場・メーカーでの製造過程の中で、多くの人々が関わって1つのパンが作られています。

普段何気なく口にしているパンについて、改めて考えてみてはいかがでしょうか。