関西では8枚切り食パンが売られていない?食パンの厚さに関するトリビア

関西では8枚切り食パンが売られていない?食パンの厚さに関するトリビア

洋食派ではなくとも、朝食に食パンを選ぶ家庭は多いものです。食パンの重量は「斤(きん)」で表され、1斤は一般に350~400gとされています。
スーパーなどでは、この1斤を4枚~8枚にスライスして販売しています。また、「サンドイッチ用」として売られている食パンはさらに薄く、10枚~14枚にスライスされ、耳をカットしてあるため調理の際に重宝します。
皆さんが売り場でよく目にするのは何枚切りですか?
実は、「売れる食パンの厚さ」は、関東と関西で全く違うのです。今回は、食パンの厚さに関するトリビアをご紹介します。

「厚切り」の関西と「薄切り」の関東

and-trivia-about-thickness-of-bread-2関西で最も売れているのは5枚切り、次は6枚切り、そして4枚切りと続き、8枚切りは全体の数%だといわれています。
それに対し、関東では最も売れている6枚切りが半数を占め、8枚切りが続きます。一方4枚、5枚切りの人気はいまひとつとされています。
厚さの目安は、4枚切りが約3cm、5枚切りは約2.4cm、6枚切りが約2cm、8枚切りは約1.5cmです。
8枚切りの需要が大きく異なる点からも、関西は厚切りを、関東は薄切りを選ぶという嗜好の違いは歴然ですよね。
スライサーを備えているパン屋さんでは、店頭で焼き立ての食パンを好みの厚さにスライスしてくれるサービスを行っていることがありますが、大阪市内にあるパン屋さんでは、厚切りの食パンが欲しいという顧客の要望に応え、スライサーの目盛りを限界まで広げた「3枚切り」を販売しているそうです。厚さ約4cmにもなる「3枚切り」の食パンは、関東ではなかなか見かけることができません。

好みの違いはどこから?

なぜこのような違いが生まれたのでしょうか?
日本で最初に食パンが作られたのは、1860年代のことです。当時は在日外国人向けに販売されていました。
戦後、進駐軍の兵士がサンドイッチを食べることから、東京の製パン会社に8枚切りのパンを作るよう依頼があり、この影響で関東では8枚切りが根付いたといわれています。その後、一般家庭に食パンが普及するようになってからも、1960年頃までは引き続き8枚切りが主流だったようです。
一方、そのような背景のない関西には薄い食パンの需要がなく、パン食を広げるためのアイデアとして、老舗のパンメーカーが「6枚切りキャンペーン」を仕掛けます。
機器の導入などで大量生産も可能となり、他社でも1968年に6枚切りを発売しました。ここから全国で6枚切りが主流となりました。関西では、パン屋さんが客の要望に応じてパンを5枚切りにしていたため、5枚切りが定着したという説があります。

厚切り・薄切りそれぞれの魅力

and-trivia-about-thickness-of-bread-3厚切り食パンの魅力は、「1枚でお腹に溜まる」「ふわふわ感がある」「食感がもちっとしている」などさまざまです。また、「トーストにしたときバターがたっぷり染み込むから」という意見もあります。
店頭に並ぶ食パンのほとんどが6枚切りか8枚切りの関東では、関西から越してきた人が5枚切り食パンを求め、製パン会社に問い合わせをすることもあるとか。
一方薄切り食パンの魅力といえば、「カリッとした軽い食感」「おやつにちょうど良い手軽さ」「サンドイッチにしやすい」など、こちらもさまざまな意見があります。厚切り派からは「ぺらぺらでパサパサの薄切りよりもちもちの厚切りが良い!」という反対意見がある一方、薄切り派からは「厚切りが食べたいときは薄切りの食パンを重ねて食べれば良い」という声もありました。
食の好みは人それぞれ。なかなかお互いの好みを理解するのは難しいのかもしれませんね。

食パン消費量のトップを占める関西勢

食パンは関東よりも関西で多く消費されています。総務省統計局の家計調査(2人以上の世帯)によると、1世帯あたりの都市別消費量のトップ3は神戸市、京都市、奈良市の関西勢が占めています。厚切りを好むため、関西の食パン消費量は関東よりも多くなるのです。

【平成24年(2012年)~26年(2014年)の年間平均消費量トップ3】
1位:神戸市…2万6,867g
2位:京都市…2万5,232g
3位:奈良市…2万4,794g

参考:全国平均…1万9,552g

おわりに

朝食メニューの定番である食パンは、8枚切りから始まりました。しかし、メーカーの戦略によって6枚切りがスタンダードとなってからは、関東と関西で全く異なる展開を見せています。
厚さ1つとってもこれだけのストーリーがある食パン。皆さんの住んでいる地域では、何枚切りの食パンが売られていますか?ぜひチェックしてみてください。